※本記事には商品プロモーション(PR)を含みます。

赤本って、いつから始めればいいんでしょう。まわりに「夏に10年分やる」と言っている友人もいて、正直あせります。

私はまだ高2なので、赤本は高3になってからでいいですよね…?

実はその2つ、答えは同じところにあります。理系の赤本は、「解く」より先に「見る」ものなんです。みおさん、いまがちょうど始めどきですよ。
私は現役の私立理系教員(教員歴15年・化学担当)として、毎年、理系を志望する生徒たちと面談を重ねています。そこでいちばん多いのが「赤本はいつから?」という質問です。
先に結論からお伝えします。理系の赤本は、高2の秋に一度手に取ってください。ただし、解く必要はありません。 理科・数学を本格的に解き始めるのは、高3の秋以降が一つの目安です。つまり、初めて赤本を開いてから解き始めるまでに、1年以上のあいだがあります。
その1年間、赤本は何に使うのか。ぜんぶ「分析」に使います。
ここが、文系との大きな違いです。文系では「赤本は早い段階で解け」と言われることがあります。しかし理系は、学校で履修範囲が終わっても、理科や数学の全範囲の土台が固まっていないと、単元をまたいだ複合問題に対応できません。だから、解けるようになるのがどうしても遅くなります。裏を返せば、解けない時期にも赤本にはできることがある——それが分析です。
本記事では、高2の秋にはじめて赤本を手に取るところから、共通テスト後の本番演習まで、時期ごとに「赤本で何をするか」を解説します。科目によって解き始める時期が違う理由、夏に急がなくていい理由、赤本を買うか無料で見るかの判断、収録年数の確認方法まで、公式の情報をもとに整理しました。
読み終えるころには、「自分はいま、赤本で何をすればいいのか」がはっきりします。
なお、この記事で扱うのは大学別の赤本(志望校ごとの過去問集)です。共通テスト用の赤本は使い方が違うので、第9章で別に取り上げます。
赤本の収録内容・発売時期・各サービスの仕様は変わることがあります。購入前には、最新情報をご確認ください。
- はじめに|結論から言うと、赤本は高2の秋に手に取ってください
- 【早見表】理系の赤本 時期別スケジュール
- そもそも赤本とは?2種類あることと、収録年数が大学で違うこと
- 赤本の「分析」とは、何を見ることなのか
- 高2の秋〜冬|はじめて赤本を手に取る(解かずに、見る)
- 高2→高3の春休み|2回目の分析がいちばん大事
- 高3の1学期〜夏休み|理科・数学は土台固めを優先する
- 高3の秋〜11月|月に1年分から解き始める
- 高3の12月〜共通テスト|本格スタートと、共通テスト対策の考え方
- 共通テスト後〜2月|ここが赤本の本番
- 赤本はいつ買う?無料で見る方法と、それでも買う理由
- 年数を足したい人へ|2つの方法
- まとめ|理系の赤本は、まず「分析」の道具です
- よくあるご質問
- 次に読むのにおすすめの記事
はじめに|結論から言うと、赤本は高2の秋に手に取ってください
まず、この記事の要点をまとめます。
| 項目 | 結論 |
|---|---|
| はじめて手に取る時期 | 高2の秋〜冬(ただし解かない・見るだけ) |
| 本格的に解き始める時期 | 高3の秋以降(理科・数学の場合) |
| 科目による違い | 英語は夏からでも取り組める。理科・数学は土台ができてから |
| その間、赤本は何に使う? | ぜんぶ「分析」 |
「解かないなら、なぜ高2の秋に手に取るのか」と思われたかもしれません。実は、赤本を出している教学社自身が、公式サイトでこう書いています。
「難しそうなので基礎ができてから…」「入試前の力試しにとっておく」と過去問になかなか手をつけない人がいます。しかし、入試直前に初めて過去問を解いた場合、もしそこで弱い分野や苦手な形式が判明しても、それを克服する時間がありません。最初は解かなくてもよいので、志望校でどんな問題が出るのかを知るために、できるだけ早い時期に過去問に触れてみましょう。
※出典:教学社「赤本の使い方」
「最初は解かなくてもよい」——ここが大事です。赤本は、解けるようになってから開く本ではありません。
なお、「高2の秋」という具体的な時期は、私が生徒たちを見てきた経験からの提案です。教学社が「高2で」と言っているわけではありません。公式が言っているのは「できるだけ早い時期に」までです。
すでに高2の秋以降になっている場合は、以下のボタンから購入を検討してみましょう。
【早見表】理系の赤本 時期別スケジュール
先に全体像をお見せします。各時期の中身は、第5章以降でひとつずつ解説します。
| 時期 | 目的 | やること | 解く? |
|---|---|---|---|
| 高2 秋〜冬 | 分析①(はじめて) | 出題分野と、志望校どうしの難易度差を見る | ✗ |
| 高2→高3 春休み | 分析②(いちばん大事) | 既習範囲のどこを重点復習するか決める | ✗ |
| 高3 1学期 | お休み | 学校で数学・理科がまだ進む時期 | ✗ |
| 高3 期末直後 | 分析③(夏の計画) | 分析し直して夏の計画を立てる | ✗ |
| 高3 夏休み | 土台固め | 問題集で単元ごとに。優先順位づけに分析を使う | △ 英語は可/理科・数学は志望校を下げて力試しなら可 |
| 高3 秋〜11月 | 解き始め | 模試と同じ=立ち位置の確認 | ○ 月に1年分 |
| 高3 12月 | 本格スタート | 共通テスト対策と並行 | ○ |
| 年明け〜共通テスト | 共通テスト最優先 | 共通テスト対策に集中 | ― |
| 共通テスト後〜2月 | 本番 | 解く→できない分野を問題集で潰す | ◎ 3日で1年分 |
「解く」欄に✗が並ぶのを見て、驚いた方もいるかもしれません。理系の赤本は、1年以上ずっと「見る本」なのです。
そもそも赤本とは?2種類あることと、収録年数が大学で違うこと
赤本には2種類あります
「赤本」と呼ばれる本は、大きく2種類あります。
| 種類 | 中身 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 大学別の赤本 | 志望校ごとの過去問と傾向と対策 | この記事で扱うのはこちら |
| 共通テスト用の赤本 | 共通テストの過去問 | 使い方が違うので第9章で |
この2つは、使う時期も使い方も違います。混ざったまま読むと話が合わなくなるので、先に切り分けておいてください。
大学赤本シリーズは370大学550点、創刊は1954年と、70年以上続くシリーズです。
赤本には「傾向と対策」が載っています
意外と知られていないのですが、赤本は過去問だけの本ではありません。各巻の冒頭に「傾向と対策」というページがあり、その大学がどんな分野をよく出すのか、どういう形式なのかがまとめられています。
この記事で「赤本を分析に使う」と言っているのは、まさにここを読むことを含みます。赤本を買う一番の理由も、実はここにあります(くわしくは第11章で)。
収録年数は、大学によって違います
ここは必ず確認してほしいポイントです。赤本に何年分入っているかは、本によって違います。
教学社の公式サイトでは、大学赤本シリーズを「1〜7年分」と説明しています。ただ、実際の商品ページを見ると幅はもっと大きく、同じ大学でも冊子によって年数が違うことがあります。
| 大学 | 2027年版の収録年数 |
|---|---|
| 東京理科大学(理学部−B方式) | 3カ年 |
| 東京理科大学(薬学部−B方式) | 5カ年 |
| 同志社大学(全学部日程) | 4カ年 |
| 同志社大学(理工学部ほか−学部個別日程) | 3カ年 |
※出典:教学社 公式サイト「大学赤本シリーズ」商品ページ・取得日2026年7月
同じ大学なのに、学部や日程が変わると年数が違うのです。
まずは、自分の志望校の赤本が何年分なのかを、商品ページか本の目次で確認してください。 これが分かっていないと、あとで「もっと年数を増やしたい」となったときに困ります(第12章で扱います)。
「2027年版」に入っているのは2026年度入試まで
もう一つ、まちがえやすいところです。
赤本の「◯年版」は、受験する年を指しています。 2027年版は「2027年度入試を受ける人向け」という意味で、中身は2026年度入試までの問題です。2027年版は2026年の夏ごろに発売されるので、2027年1〜2月に実施される入試の問題が入っているはずがありません。
たとえば2027年版の東京大学(理科)は、2020〜2026年度の7年分が収録されています。
赤本の「分析」とは、何を見ることなのか
ここがこの記事の中心です。「分析しましょう」と言われても、何を見ればいいのか分からないというのが正直なところだと思います。具体的に決めておきましょう。
まず、主なチェックポイントは4つ
- 出題形式
- 出題内容・頻出分野
- 問題のレベル
- 時間配分
そして、過去問を解く目的について、教学社の公式HPにはこう書かれています。
過去問を解くのは目標と現状の分析のため。決して、同じ問題が出るかもしれないから、ではありません。
この考え方は、私も強く共感します。そして、勘違いしている生徒が多く、使い方がもったいないと感じるポイントの1つでもあります。
分析は、時期とともに深くなります
一度で全部やろうとしなくて大丈夫です。見る項目は、学年が上がるにつれて増えていきます。
| 段階 | 時期 | 見る項目 |
|---|---|---|
| 入門(3つ) | 高2 秋〜冬 | ①どの分野からよく出るか ②第1〜第3志望の難易度の差 ③手持ちの問題集でいうと、発展問題レベルか、基本の少し上か |
| 本格(+5つ) | 高2→高3 春休み | ④大問数と試験時間 ⑤解答形式(記述式/マーク式/空所補充)⑥計算量・文章量 ⑦途中式や論述が必要か ⑧既習範囲で重点的に復習すべき単元 |
| 仕上げ(+3つ) | 高3 期末後〜秋 | ⑨頻出単元の優先順位(夏の計画に使う)⑩合格最低点・目標得点率 ⑪捨てる問題と取る問題 |
⚠️「捨てる問題と取る問題」について
上位大学の中には、一般的なレベルでは時間内にすべての問題を解き切るのが難しい出題をする大学もあります。その場合、一部の難問を見極めて手を出さず、確実に取れるところで得点する——という取捨選択を、試験時間内に行う必要が出てきます。少し特殊な進め方になるので、自分の受験校がそういう出題なのかどうかを、赤本で確認してみてください。
高2の秋にやるのは、いちばん上の3つだけです。それで十分です。
なお、「同じ赤本を何度も見るのは無駄では?」と思われるかもしれません。そうではありません。勉強が進むと、同じ問題を見ても、見えてくる深さが変わります。
高2の秋には「難しそう」としか思えなかった問題が、春休みには「これは◯◯の単元だな」と分かるようになり、夏には「この解法で行けそうだ」と見えてくる。分析の精度は、自分の学力と一緒に上がっていきます。 だから、時期を変えて何度も見る意味があるのです。
理系で特に大事なのが「解答形式」です
理系の受験生に、特に見てほしい項目があります。数学の解答形式です。ここは学問の系統によって、傾向がはっきり分かれます。
| 系統 | 個別入試の数学 | 実例(2026年度入試) |
|---|---|---|
| 理学・理工系の上位校 | 記述式となることが多い。途中式や論述の練習が必要 | 東京都立大学(前期)=完全記述式・答案用紙3枚・75分/電気通信大学(前期)=完全記述式・120分・解答用紙4枚/早稲田大学 理工3学部=数学・物理・化学・生物は記述解答を含む |
| 看護・医療・薬学系(医学部を除く) | 共通テストに近いマーク式となることが多い(空所補充) | 東京薬科大学 薬学部B方式=完全マークシートの空所補充/星薬科大学=すべての入試方式でマークシート(公式Q&Aで明言) |

ここは対策に直結します。理工系の上位校を目指すなら、答案を書く練習そのものが必要です。一方、薬学系のように共通テストに近い形式なら、共通テストの数学対策がそのまま個別入試の対策になります。同じ「数学の勉強」でも、やるべきことが変わってくるのです。
使う問題集も変わります。たとえば同じ「チャート式」(数研出版)でも、受験生のあいだで「青チャート」「緑チャート」と表紙の色で呼び分けられているように、目的の違う本が並んでいます。
| 書名(通称) | 向いている対策 |
|---|---|
| 『チャート式 基礎からの数学』(青チャート) | 記述式の対策。網羅系なので、途中式まで書いて解く練習を積める。科目別に分冊されていて、理系なら「数学II+B+C」が中心(数Ⅲが必要な人は「数学III+C」も) |
| 『チャート式 大学入学共通テスト対策 数学IA+IIBC』(緑チャート) | マーク式・共通テスト型の対策。1冊で数学I・A・II・B・Cをカバーし、形式に慣れながら処理速度を上げられる |
同じシリーズでも、目的がまったく違います。 志望校の解答形式を見てから選んでください。
▼ 記述式の対策に|青チャート(数学II+B+C)
▼ マーク式・共通テスト型の対策に|緑チャート
ただし、これはあくまで傾向です。すべての大学に当てはまるわけではありません。だからこそ、赤本で自分の志望校がどうなっているかを、自分の目で確認する必要があります。
【注意】「数学の試験がない」=数学が要らない、ではありません
たとえば神奈川県立保健福祉大学の一般選抜(前期)には「数学」という科目試験がなく、総合問題(90分)と面接です。しかし大学入学共通テストでは「数学Ⅰ、数学A」が指定されています(看護・栄養・リハビリテーションの各専攻は必須100点)。個別試験の科目だけを見て「数学は不要」と判断すると、出願そのものができなくなります。ここでも、確認すべきは赤本と募集要項の両方です。
【化学担当教員からのチェックポイント】有効数字の桁数を見ておく
化学を教えている立場から、ひとつだけ。志望校の過去問で、有効数字が何桁で指定されているかを見ておいてください。 普段の計算練習の精度を、そこに合わせられます。
大事なのは「どの段階で丸めるか」です。途中は必要な桁数を残し、最後に指定の桁へ丸める——これが基本。途中で2桁に落とすと、丸めの誤差で答えがずれます。逆に、細かすぎる桁のまま計算を続けると、本番で時間が足りなくなります。
ただし、桁数は大学ごとに固定ではありません。 たとえば東京都立大学の前期化学は、2026年度は数値問題がすべて「有効数字2桁」でした。一方、2025年度は「3桁」が中心です。1年分で決めつけず、複数年度を見てください。
チェックするなら、高2の春休み(分析②のタイミング)がおすすめです。
✏️ コラム
現役教員が本気で6年分を分析すると、見えてくるもの
何年分もの過去問を並べて眺めていると、隔年でよく出る分野や、少しクセのある問題に気づくことがあります。
そういうとき、私はその大学の公式サイトで研究室を検索してみることがあります。すると——研究内容と出題内容がぴたりと重なる大学が、たまにあるのです。
ここまでの分析を現役生がやるのは現実的ではないので、おすすめはしません。もちろん、出題を予測するためのものでもありません。 ただ、自分が行きたい大学の研究内容を調べていると、思わぬところで得をすることがあるかもしれません。 志望理由書を書くときにも役に立ちますので、一度のぞいてみてください。
高2の秋〜冬|はじめて赤本を手に取る(解かずに、見る)
目的は分析。解かなくていい
高2の秋。ここが、赤本と初めて出会うタイミングです。
やることは見るだけ。解く必要はありません。
見るのは3つだけ
第4章の「入門3項目」です。
- どの分野からの出題が多いか
- 志望校・第2志望・第3志望で、問題の難易度にどれくらい差があるか
- 手持ちの問題集でいうと、どのレベルの問題が出ているか
どこまで分かれば十分?
3つめについて、目安をお伝えします。
「いま使っている問題集の“発展問題”レベルからの出題だな」なのか、「基本問題のちょっと難しいくらいだな」なのか。この肌感がつかめれば十分です。 それ以上の精度は、この時期には求めなくて構いません。

高2のうちは、自分の学校の定期試験と比べてみるのがいちばん分かりやすいと思います。定期試験に近いレベルなら、いまの定期試験の勉強を繰り返すことが、そのまま受験勉強になります。 やや難しいと感じるなら、定期試験の勉強にプラスした学習が必要だ、ということです。
というのも、高2の秋はまだ習っていない単元が多く、細かく分析しようとしても手が止まってしまうからです。「うちの志望校はこのくらいの難しさ」という感覚を持って高3を迎える、それがこの時期の目的です。
志望校がまだ決まっていない場合は
高2の秋に第一志望が固まっていなくても、まったく問題ありません。
いま候補にしている大学の中から、少し挑戦的な1校を選んで見てみてください。志望校は変わって当然ですし、1校見ておくだけで「理系の入試問題ってこういうものか」という基準ができます。その基準があると、あとで別の大学を見たときに比較ができるようになります。
なお、この段階なら買わずに、学校の進路資料室や書店で手に取るのでも構いません(買う・買わないの判断は第11章でくわしく扱います)。
高2→高3の春休み|2回目の分析がいちばん大事
ここはしっかり時間をとってください
高2の3学期が終わった春休み。ここが2回目の分析です。そして、この記事の中で一番しっかりやってほしい分析でもあります。
理由は、ここでの分析結果がそのまま高3の勉強計画に直結するからです。
分析の視点は「どこを重点的に復習すると効率がいいか」
高2の秋は「どんな問題が出るか」を見るだけでした。春休みは一歩進んで、こう考えます。

数学や理科の既習範囲のうち、どこを重点的に復習すれば、受験勉強として効率がいいか。 ここを春休みに決めておくと、高3の出だしが軽くなります。
高2の終わりには、数学ⅠA・ⅡBや化学の理論分野など、かなりの範囲を学び終えているはずです。そのすでに習った範囲の中で、志望校がよく出す分野はどこか。そこを見つけて、新学年の最初に手を付ける——これが一番効率のいい入り方です。
春休みに見る、5つの項目
高2の秋に見た3つに加えて、次の5つを見ていきます。
なお、化学の有効数字(第4章の囲み)も、このタイミングで確認しておくのがおすすめです。
高3の1学期〜夏休み|理科・数学は土台固めを優先する
1学期は、赤本を一度置いてかまいません
高3になると「もう受験生だ」と焦る気持ちが出てきます。ただ、現実には多くの学校で、1学期はまだ数学や理科の授業が進んでいます。習っていない単元がある状態で過去問に向かっても、得られるものは多くありません。
この時期は、学校の授業と定期テストに集中し、放課後は既習範囲の土台がために取り組みましょう。
期末テストの直後に、3回目の分析
次に赤本と向き合うのは、1学期の期末テストが終わった直後です。ここで分析し直して、夏休みの勉強計画を立てます。
科目によって「解き始められる時期」は違います
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことのひとつです。
| 科目 | 夏の扱い | 条件 |
|---|---|---|
| 英語 | 夏からでも取り組める | ― |
| 理科・数学 | まだ早い | 基礎のインプットが7割程度でき、解説を読める状態になってから |
英語は、範囲という考え方が理科・数学ほど強くありません。単語と文法の土台があれば、夏の時点でも志望校の英語を解いて手ごたえを確かめられます。
一方で理科と数学は、土台ができていないと過去問を解いても得るものが少ないのです。では「土台ができた」とは、どう判断すればいいのでしょうか。

目安は2つあります。数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Cと理科は、学校の基本問題集を自力で解けること。共通テスト型の模試で6〜7割とれていれば、さらに安心です。数学Ⅲと記述式の科目は、基本問題集の典型問題を自力で解けるかどうか。そのうえで、解説を読めば解法を再現できるなら大丈夫です。
多くの学校では、数学Ⅲや理科の履修範囲が終わるのは秋以降です。だから、それ以前に過去問演習をしても効果が出にくい——これが「高3の秋から」の理由です。月で決めているのではなく、学習の到達度で決めているとお考えください。
⚠️ ただし例外があります。 中高一貫の上位校など、2年次で教科書の内容を終えてしまう学校もあります。その場合は、上の2つの目安を満たした時点で前倒しして構いません。
なお、教学社の公式サイトに掲載されている河合塾講師のコラムでも、過去問に取り組む条件として「基礎のインプットが7割方できている」「過去問の解答・解説を読んでさっぱりわからないレベルではない」ことが挙げられています。考え方は同じです。
夏の分析で気づくこと──数Ⅲの比重
期末後に分析すると、多くの人が同じことに気づきます。数Ⅲの出題範囲が非常に広く、しかも出題頻度も高い、ということです。
しかも新課程では、数Ⅲの内容は「極限」「微分法」「積分法」の3つだけになりました(複素数平面や平面上の曲線は数学Cへ移りました)。つまり「数Ⅲ=ほぼ微積」が、文字どおり正確な状態です。
この事実から、夏の数学の方針が決まります。共通テスト対策で使う数ⅠA・ⅡBCに加えて、個別入試では数Ⅲの学習がどれだけ重要か——これが分析を通して腑に落ちるはずです。
具体的には、夏の数学は、数ⅠA・ⅡBCと数Ⅲを、同じくらいの比率で学習する必要があります。
特に、数学Ⅱの分野と数Ⅲの関連性が高いので、数Ⅲが必要な受験生は、数学Ⅱと数Ⅲから取り組むと効率がいい場合があります。
⚠️ ここで注意してほしいことがあります。真面目な生徒ほど、数学を数ⅠAから順番に取り組んで、数Ⅲの学習が終わらないまま秋を迎える——という失敗をしがちです。順番どおりにやることが、必ずしも正解ではありません。
理科は「1週間に1単元」で潰す
理科は、高3の1学期まで進んでいれば、化学であれば理論化学など受験の核になる分野の土台がある程度できているころです。
夏休みは、1週間に1単元といった目標を立てて、単元ごとにしっかり潰していくことをおすすめします。その優先順位づけに、赤本の分析を使ってください。 志望校がよく出す単元から手を付けるのが、いちばん効率のいい進め方です。
夏に「5〜10年分」を解くのは、多くの理系受験生には非効率です
夏になると、「夏休み中に過去問を5年分から10年分やりなさい」という指示を聞くことがあります。これは、映像授業などで問題の解説まで用意されている予備校に通っている場合には成り立つ方法です。
しかし、そうした環境がない理系受験生が、夏に第一志望の問題を解くのは現実的ではありません。理由は2つあります。
- 赤本は、演習用の問題集と比べると、解説が充実しているとは言えません。 力が十分についていない段階では、解けなかった問題を自力で理解しきるのが難しいのです。
- 間違えた問題の類題は、問題集のほうが定着させやすい。 過去問は1問1問がばらばらなので、「同じタイプをもう1問」ができません。
だから夏は、あくまでまだ分析段階です。
ただし、「夏は一切解いてはいけない」という意味ではありません。次のような使い方はおすすめできます。
夏の力試しなら、志望校のレベルを下げて
どうしても解いてみたい、力試しをしたい——そう思うのは自然なことです。その場合は、第一志望から偏差値で5〜10程度下げた大学の赤本に取り組んでみてください。理科・数学でも、いまの力で「対応できるかどうか」の確認はできます。
第一志望そのものに挑むのは、秋以降で十分です。
夏にやるべきこと
結論はシンプルです。手持ちの問題集で、単元ごとに土台を固めること。 化学であれば、学校の問題集に加えて、共通テスト対策の問題集や『化学重要問題集』のような、単元ごとにしっかり取り組める問題集が向いています。
学校で問題集が配布されているなら、まずはそれを使い切るのが先です。 そのうえで足りないと感じたら、共通テスト対策には『短期攻略 大学入学共通テスト 化学』、記述も含めた単元ごとの演習には『実戦 化学重要問題集』あたりが定番です。
▼ 共通テスト対策の化学に|短期攻略 大学入学共通テスト 化学
▼ 単元ごとの演習に|実戦 化学重要問題集
夏に土台が固まっているかどうかで、秋以降の伸びがまったく変わります。
高3の秋〜11月|月に1年分から解き始める
ようやく、解き始めます
11月ごろまでにしっかり土台を固めてくると、赤本に取り組める人が増えてきます。まずは学校などで使っている基本の問題集で土台を固めたうえで、秋以降は月に1年分くらいのペースで取り組んでみてください。
目的は「模試と同じ」です
この時期に赤本を解く目的は、模試と同じです。つまり、自分の立ち位置を知ることと、成長を実感すること。合格点を取ることではありません。
だから、点が取れなくても落ち込む必要はまったくありません。むしろ「どこが取れていないか」が分かれば大成功です。
模試で手一杯なら、焦らなくて大丈夫
11月・12月は、模試が非常にたくさん行われる時期でもあります。模試で手一杯になるようなら、赤本を解くことを焦りすぎなくて大丈夫です。
模試も過去問も、目的は同じ「現状把握」です。両方を無理に詰め込むより、片方をしっかり復習するほうが力になります。
解いたあとに力を入れる場所
この時期の赤本の使い方として、意識してほしいことがあります。解いてみて、
- 解けなかった分野
- 学習したので、あと一歩で解けるようになりそうだと思う分野
このあたりに力を入れて取り組んでください。 特に後者は伸びしろが大きく、短期間で得点に変わりやすいところです。
最新年度は「見る」と「解く」を分けます
「最新年度の問題は、いつ解けばいいですか」という質問をよく受けます。私の答えは、見るのは早く、解くのは最後です。
- 形式の確認は、早い時期にしてかまいません。
- ただし、時間を計って本番形式で解くのは、直前期まで残しておきます。
理由は、傾向が本番にいちばん近いものを、直前期の演習に使うのが効率的だからです。
これは私の考え方です。実は教学社の公式サイトの中でも、「最近3年分は直前期まで残す」という立場と「新しい年度を中心に取り組もう」という立場の両方が紹介されていて、統一された答えがあるわけではありません。科目数や残り時間、受験校の数によっても最適解は変わりますので、迷ったら「形式は早く見る/通しの演習は残す」と覚えておいてください。
⚠️ 例外:入試が変わった年度は、最新を優先して分析します
入試方式・試験時間・科目・出題形式が直近の年度で変更された場合は、話が別です。その年度こそ最新の傾向なので、早い段階で分析してください。
実際、東京薬科大学は2024年度から入試方式が再編されていますし、東京理科大学は2026年度に創域情報学部が新設されています。共通テストの数学②も、旧課程の60分から70分に変わりました。「去年までと同じ」とは限らないのです。
解いたあと、何を記録するか
赤本は「解いて終わり」にすると、ほとんど身につきません。分析は、解く前だけでなく、解いたあとにも続きます。 1年分解いたら、次の4つを残してください。
- 得点、または正答率
- 時間が足りなかった大問はどれか
- できなかった原因の分類(知識不足/計算ミス/方針が立たない、のどれか)
- 次に問題集で復習する単元
特に3つめが大事です。同じ「できなかった」でも、知識が抜けているのか、方針が立たないのかで、打つ手がまったく違います。
⚠️ やりがちな失敗:赤本を短期間に何周もする
同じ年度を短期間に何周もして、覚えた答えで点数を上げることを目的にしないでください。 問題を覚えてしまった状態で解き直しても、力にはなりにくいからです。
繰り返し解くのは、類題が載っている問題集のほうです。赤本は「解く → 分析する → 弱点を見つける → 問題集に戻る」という流れの、起点として使ってください。
ただし、問題集で弱点を補強したあとに、解法や答案を再現できるかを確かめる解き直しには意味があります。同じ「解き直し」でも、目的がまったく違います。
合格最低点と自己採点の考え方
過去問を解くと、必ず「何点取れていればいいのか」で迷います。ここで注意点をお伝えします。
まず、合格最低点だけを目標にしないでください。年度によって難易度が変わりますし、科目ごとの配点も違います。自分がどの科目で稼ぐのかという設計のほうが大切です。
そして、記述問題は、自分で正確に採点するのが難しいという現実があります。さらに、教学社はこう明言しています。
設問ごとの配点は大学から公表されていないことが多く、赤本に掲載していないことがあります。配点の推測もいたしませんのでご了承ください。
つまり、厳密な点数を出せない場合があるのです。そういうときは、点数にこだわらず、正答率や、完答できた大問の数を記録してください。それでも成長は十分に見えます。
(なお共通テストについては、大学入試センターが公開している「正解」のPDFに設問ごとの配点まで載っていますので、自己採点は正確にできます。)
高3の12月〜共通テスト|本格スタートと、共通テスト対策の考え方
期末試験のあとが、本格スタート
本格的に赤本に取り組み始める時期としては、12月の期末試験が終わった後です。ここから、大学別の赤本のペースを上げていきます。
12月に大学別の赤本をやるのが効果的な理由
冬休みに入ると共通テストの対策も必要になりますが、12月中は大学別の赤本に取り組むのも効果的だと考えています。
近年の共通テストでは、対策のしにくい、少しひねったタイプの問題が出題されることがあります。こうした問題に対しては、MARCHクラスの2月入試に対応できる力を磨くと、共通テストのひねった問題にも対応できる力が育ちます。
ただし、共通テストは形式・情報量・時間配分が独特です。共通テスト専用の練習は、別に必要だと考えてください。「大学別の対策をしていれば共通テストは大丈夫」という意味ではありません。
共通テスト対策に「共通テストの赤本」は使う?
ここで、第3章で分けた「もう一つの赤本」の話になります。結論から言うと、使います。ただし、順番があります。
STEP 1とSTEP 3は、同じ過去問を使いますが、目的がまったく違います。 1つめは「見る」ため、3つめは「解く」ためです。
そして、STEP 1が「まず過去問で分析」から始まっていることに注目してください。これは、大学別の赤本とまったく同じ原則です。赤本はまず分析の道具——共通テストでも変わりません。
どこまで完璧にするか
もうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。

共通テスト対策は、どのレベルの学校を受けるかによって比重のかけ方が変わります。得点率8割以上を必要としている場合以外は、完璧にこだわらないことも1つのコツです。
限られた時間の中で、共通テストに時間をかけすぎて個別入試の対策が薄くなる——これは毎年よく見る失敗です。志望校で共通テストがどれくらいの比重なのかを、先に確認しておいてください。
補足:共通テストは、まだ過去問が少ない
なぜSTEP 4で予想問題を使うのか。理由は単純で、共通テストは過去問そのものが少ないからです。
共通テストの本試験は、2021〜2026年度の6年分あります。ただし、新課程に対応したのは2025年1月からなので、いまの出題範囲に合う本試験は、2025・2026年度の2年分だけです(3年目は2027年1月)。追試験まで含めても、現行課程は各科目4回分にとどまります。
これが分かりやすく表れているのが、教学社の巻ごとの内訳です。
| 巻 | 表示されている回数 | そのうち現行課程の共通テスト |
|---|---|---|
| 『共通テスト過去問研究 情報Ⅰ』 | 10回分 | 4回分(本試験2+追試験2)。残りは試作問題・サンプル問題2回と、旧「情報関係基礎」4回で補われています |
| 『共通テスト過去問研究 数学Ⅰ,A/Ⅱ,B,C』 | 26回分 | 8回分(数学Ⅰ・Aと数学Ⅱ・B・Cの、それぞれ本試験2回・追試験2回)。残りは旧課程16回分とオリジナル模試2回分です |
つまり、表示されている回数のすべてが、いまと同じ範囲・形式ではありません。 数字だけを見て演習量を期待すると、範囲の違う問題に時間を使うことになります。
参考までに、上の表で挙げた教材を並べておきます。ここでは例として数学(数学Ⅰ・A)の巻を挙げています。ほかの科目も同じシリーズで出ているので、自分の受験科目の巻を選んでください。
▼ 過去問(本番と同じ問題を解く)
教学社『共通テスト過去問研究』(解答用紙つき)
河合出版『共通テスト過去問レビュー』(過去10年分)
▼ 予想問題(本番と同じ形式で数をこなす)
河合出版『共通テスト総合問題集』(通称・黒本)
駿台文庫『共通テスト実戦問題集』(通称・青本)
Z会『共通テスト実戦模試』
東進『共通テスト実戦問題集』
共通テスト対策の教材(整理)
| 種類 | 例 | 中身 |
|---|---|---|
| 過去問 | 大学入試センター公式サイト | 過去3年分・問題と正解(配点つき)・解説なし・登録不要 |
| 過去問 | 教学社『共通テスト過去問研究』 | 紙のマークシート解答用紙が別冊付属。※数学は「数学Ⅰ,A/Ⅱ,B,C」の合本 |
| 過去問 | 河合出版『共通テスト過去問レビュー』 | 共通テスト6年度+センター試験4年度=過去10年分。※数学は合本 |
| 予想問題 | 河合出版『共通テスト総合問題集』(通称・黒本) | 全統模試5回分+直近1月の本試験1回分。※科目ごとの分冊 |
| 予想問題 | 駿台文庫『共通テスト実戦問題集』(通称・青本) | オリジナル予想問題5回分+過去問2回分。※科目ごとの分冊 |
| 予想問題 | Z会『共通テスト実戦模試』 | ※科目ごとの分冊 |
| 予想問題 | 『東進 共通テスト実戦問題集』 | オリジナル予想問題5回分。※科目ごとの分冊 |
【補足】買うときの注意
河合塾の『共通テスト K-パック』は高校専用の商品で、書店では買えません(学校で申し込み用紙が配られるものです)。また、駿台の『共通テスト実戦問題集』は科目によって刊行時期が分かれており、理科は英語・数学・国語より遅く出ます。理系の方は、理科の発売時期を各社の公式サイトで確認しておいてください。
年が明けたら、まず共通テスト対策
年を明けたら、まずは共通テスト対策です。ここは切り替えてください。
私立専願の人は、ここが分岐点
なお、私立専願でも、共通テスト利用入試は使う人がほとんどです。「共通テストをまったく使わない」という人は、受験戦略を勘違いしている場合があるので注意が必要です。共通テスト利用は、1回の受験で複数の大学・学部に出願できる、負担の小さい合格の取り方だからです。
そのうえで、共通テスト利用で滑り止めの確保までできそうなくらい完成度が高い私立専願の場合は、共通テスト対策をほどほどにして、大学別の赤本に切り替えられます。周りが共通テスト対策をしている時期に、志望校の過去問を積める——これは大きなアドバンテージです。ここは自分の仕上がりを見て判断してください。
共通テスト後〜2月|ここが赤本の本番
3日で1年分が目安
共通テストが終わった後から、赤本の本番です。
目安は、1つの大学・1つの方式の1年分を、3日で進めるイメージです。
- 1日目:時間を計って解く
- 2〜3日目:復習と、できなかった分野の補強
「3日ごとに全科目の過去問を大量に解く」という意味ではありません。1年分をていねいに使い切る、と考えてください。
できなかった分野は、問題集に戻る
解いて終わりにしないでください。できなかった分野は、手持ちの問題集に戻って単元ごとに潰します。 そしてまた次の1年分に進む。この往復を繰り返して、ひたすらレベルを上げていく時期です。
第8章でお伝えした「解いたあとの記録」が、ここで効いてきます。原因が分類できていれば、戻る場所がすぐ分かります。
✏️ コラム
入試問題にも「流行」があります
毎年、過去問の分析をしていると、国公立の上位校で出題された問題の類題が、少しずつほかの国公立へ、そしてMARCHあたりまで広がっていくのを見かけることがあります。良問が世の中に伝わっていく過程を見ているようで、教員としては少しうれしくなる瞬間です。
この現象があるので、国公立の上位校を受ける人が赤本に丁寧に取り組んでおくと、MARCHなどを併願するときに、その恩恵を受けられることがあります。 第一志望の対策が、そのまま併願校の対策にもなっているわけです。
併願校の赤本は、第一志望のあとで
ゴールから逆算してください。まず、第一志望の赤本を、余裕をもってすべて解き切れるスケジュールを立てます。 そのうえで、空いた時間に第二志望以降のスケジュールを入れていきましょう。
第二志望以降の赤本は、すべての年度を解き切れなかったとしても、慌てなくて大丈夫です。 第一志望に必要な力がついていれば、併願校の問題にも対応しやすくなるからです。
ただし、「まったく見ない」のは危険です。 併願校についても、最低限この3つは確認しておいてください。
- 最新年度の形式(大問数・解答形式)
- 時間を計った1年分
- 科目・配点・出題形式が、第一志望とどう違うか
温存しておいた最新年度を、ここで使う
そして、第8章で残しておいた最新年度の出番です。本番にいちばん近い傾向の問題を、本番直前に、本番と同じ条件で解く。 ここまで取っておいた価値が出るところです。
赤本はいつ買う?無料で見る方法と、それでも買う理由
結論:高2の秋は、1冊買ってしまうのが一番です
理由は2つあります。
ひとつは、手元にあると、思いついたときに何度でも開けること。 分析は1回で終わりではありません。この記事のとおり、高2秋・春休み・高3の期末後と、最低でも3回やります。そのたびに借りに行くのは、現実的ではありません。
もうひとつは、机の上に志望校の赤本があること自体が、毎日の意識づけになることです。 目に入るたびに「自分はこの大学を目指している」と思い出せます。高2の秋という早い時期に手元へ置く価値は、ここにもあります。
ただ、「高2でもう買うの?」とためらう気持ちも分かります。その場合は、まず学校の進路資料室・地域の図書館・大きめの書店で手に取るところからで大丈夫です。この時期の目的は分析なので、最新版でなくても構いません。
正直に言うと、過去問は無料でも手に入ります
隠しても仕方がないので、先にお伝えします。過去問を無料で見る方法はいくつもあります。
| こんなときは | おすすめ | 内容 |
|---|---|---|
| 手元に置いて何度も分析したい | 赤本を買う | 傾向と対策つき。まとまった年数が一度に手に入る |
| 直近1年だけ形式を見たい | 旺文社 パスナビ | 全国約230大学。無料は原則として直近1年分(一部の大学は最大3年分)。解答・解説つき。旺文社まなびID(無料)の登録が必要 |
| 幅広く問題と解答を見たい | 東進 過去問データベース | 完全無料。会員登録が必要。公式の表記は「問題・解答」 |
| 共通テストの過去問 | 大学入試センター公式 | 過去3年分。登録不要。正解に配点あり。解説はなし |
| 赤本が未発売・入手しにくい | 大学公式サイト/資料請求 | 大学による。⚠️著作権の関係で英語・国語が抜けることがある |
⚠️ 無料で見るときの注意
東進は掲載年度が大学によって大きく違うので、志望校が何年度分あるかを先に確認してください。大学公式は著作権の関係で英語・国語が抜けることがよくあります。なお、出所のはっきりしないサイトの過去問は、この記事では紹介していません。
資料請求で過去問をもらえる大学もあります
意外と知られていないのが、資料請求すると過去問を送ってくれる大学があることです。東京・神奈川では、たとえば次の大学が該当します(2026年7月時点)。
| 大学 | 内容 |
|---|---|
| 東京電機大学 | 『一般選抜過去問題集』を本体・送料とも無料で送付。問題と解答に加えて、出題した先生方からのアドバイスつき(※国語は非掲載) |
| 工学院大学 | 過去問題集を無料で送付(2026年7月時点で入手できるのは2025年度版) |
| 東京都市大学 | 資料請求した高3・既卒生に、過去問題集「解答と解説」を同封(⚠️高2以下は対象外。オープンキャンパスでは学年を問わず配布) |
4工大のうち3校が該当します。ほかにも、神奈川歯科大学(送料とも無料)、横浜市立大学(解説つきのPDFをWeb公開)、関東学院大学(ページに掲載されている共通のIDとパスワードだけでダウンロードでき、個人情報の登録は不要)などがあります。
なお、これらの過去問題集は、それぞれの大学の公式サイトにある資料請求から申し込みます。
それでも赤本を買う理由
無料の手段があるうえで、それでも私が「赤本は買ってしまうのが一番」と言うのには、理由があります。
いちばん大きいのは、赤本には「傾向と対策」が載っていることです。
この記事でずっとお伝えしてきたとおり、理系にとって赤本はまず分析の道具です。無料のサービスで手に入るのは、基本的に問題と解答であって、「この大学はどの分野をよく出すのか」「どういう形式なのか」という分析までは付いてきません。赤本を買う価値は、実はここにあります。
ほかにも理由があります。
- まとまった年数が、一度に手に入る
- 解説がある(充実しているとは言えませんが、無料サービスよりはあります。ただし前述のとおり、設問ごとの配点は載っていないことがあります)
- 紙で、通しで解ける(時間を計る・解答用紙を使う)
- 手元に置けること自体が、毎日の意識づけになる
赤本はいつ発売される?
大学別の赤本は、私立でおおむね5〜10月、国公立で5〜11月にかけて順次発売されます。志望校の巻がいつ出るかは、教学社の公式サイトで確認できます。
ひとつ注意があります。赤本の年度切り替えは、毎年4月下旬です。それ以降、教学社では前年度版を取り扱いません。つまり旧版が欲しい場合は、書店の在庫か中古を探すことになります(第12章で扱います)。
大学別の赤本が実際にどんな本なのか、2027年版の例を挙げておきます。収録年数は巻によって違うので、商品ページで必ず確認してください。
▼ 例①|明治大学(理工学部−学部別入試)2027年版
▼ 例②|東京理科大学(工学部−B方式)2027年版
年数を足したい人へ|2つの方法
「3年分では足りない。もっと解きたい」——秋以降、そう思う人が出てきます。方法は2つあります。
方法①:志望校が対象なら「難関校過去問シリーズ」
同じ教学社から、難関校過去問シリーズというシリーズが出ています。「東大の理系数学25カ年」のような本です。
| 大学赤本シリーズ | 難関校過去問シリーズ | |
|---|---|---|
| 収録年数 | 1〜7年分 | 10〜25年分 |
| 構成 | 全教科をまとめて | 科目別に分冊 |
| 掲載の仕方 | 試験をそのまま | 出題形式別・分野別 |
※出典:教学社 公式サイト
理系にとってありがたいのは、分野別に集中して演習できることです。「化学の理論分野だけを10年分」といった使い方ができるので、弱点を潰すのに向いています。
⚠️ ただし、大学別の赤本の代わりにはなりません。 大学別の赤本は「試験をそのまま」載せているので年度ごとの本番形式の演習に使うもの、難関校過去問シリーズは弱点補強用の補助教材です。役割が違うので、難関校過去問シリーズだけでは、年度ごとに通して解く練習まではできません。
⚠️ 対象校が限られます。 2027年度受験用は全21大学75点です(2026年7月確認)。東京・神奈川では、東京大学・東京科学大学・一橋大学・早稲田大学・慶應義塾大学・明治大学・中央大学・法政大学などが対象です。改訂は原則2年ごとで、首都圏の大学は西暦の偶数年に改訂されます。帯の「◯年度受験用」という表示で確認してください。
方法②:対象外なら、中古の旧版を足す
志望校が難関校過去問シリーズの対象でない場合は、中古で旧版を買い足す方法があります。
考え方はシンプルで、収録年数と同じだけ古い版を足すと、年度が重なりにくいというものです。3カ年収録の赤本なら、3年前の版を足せば、おおむね年度が隣り合います。
⚠️ ただし、これは目安です。計算どおりにならないことがあります。買う前に、必ず収録年度を確認してください。
計算どおりにならない理由は、こんなにあります。
| 理由 | 実際の例 |
|---|---|
| 同じ大学でも冊子によって年数が違う | 東京理科大学=理学部3カ年・薬学部5カ年 |
| 版によって収録年数が変わることがある | 旧版の商品ページは公開されていないため、公式には確認できません |
| 収録する学部の範囲が変わる | 東京理科大学=創域情報学部が2026年度に新設され、本の構成が変わりました |
| 方式や科目が変わると、同じ年度でも中身が別物 | 東京薬科大学=2023年度はB方式Ⅰ期・Ⅱ期、2024年度以降はB方式・T方式 |
| 著作権の都合で問題文が省略されることがある | 東京大学の英語リスニング、同志社大学・慶應義塾大学(薬)・明治大学(法)の英語の大問など |
| 一部の日程・方式は最初から掲載されていない | 東京理科大学=理学部第二部は掲載されていません |
探し方は、フリマアプリで「◯◯大学 赤本 ○年版」と検索するのが手軽です。見るポイントは3つだけです。
- 収録年度:商品写真か目次で、自分の目で確かめる
- 状態:書き込みや使用感の有無を、写真と説明文で見る
- 価格と在庫:旧版は1点もの。値段は日々変わり、迷っているうちに売れてしまいます
古い年度を使うときの注意(ここが大事です)
古い年度を足すときに、必ず知っておいてほしいことがあります。2025年度入試から新課程に切り替わりました。
数学では、ベクトルが数学Bから数学Cへ、複素数平面と平面上の曲線が数学Ⅲから数学Cへ移りました。数学Ⅲは「極限・微分法・積分法」の3つになっています。科目のラベルが変わっているので、古い年度の問題は「いま自分の範囲かどうか」を確認しながら使う必要があります。
化学にも変化があります。熱化学の表記が「熱化学方程式」から「反応エンタルピー(ΔH)」に変わりました。 実際、2026年度の東京都立大学や星薬科大学の化学では「生成エンタルピー」「結合エンタルピー」という表記で出題されています。旧課程の問題を解くと、表記そのものが今と違うのです。
※出典:文部科学省 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
さて、ここで思い出してください。この記事の軸は何だったでしょうか。
「理系の赤本は、まず分析の道具」でした。
特に数学と理科は、範囲や表記が今と違う年度があります。そういう問題は、時間を計って解くには向きません。でも、「この大学はどの分野をよく出すか」を分析するには、まったく問題なく使えます。(英語のように、範囲の変更が影響しにくい科目もあります。)
古い版は、まず分析用として使うのがちょうどいいのです。
弱点が、そのまま使い道になる。中古の旧版は、そういう教材だと考えてください。
まとめ|理系の赤本は、まず「分析」の道具です
最後に、時期ごとの要点をまとめます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 高2 秋〜冬 | はじめて手に取る。見るのは3つだけ(出題分野・志望校間の難易度差・問題のレベル) |
| 高2→高3 春休み | いちばん大事な分析。既習範囲のどこを重点復習するか決める |
| 高3 1学期 | 赤本は一度置く。学校の授業に集中 |
| 高3 期末直後 | 3回目の分析。夏の計画を立てる |
| 高3 夏休み | 問題集で土台固め。英語は解いてもよい。理科・数学は志望校を下げての力試しまで |
| 高3 秋〜11月 | 月に1年分。目的は模試と同じ=立ち位置の確認 |
| 高3 12月 | 本格スタート。共通テスト対策と並行 |
| 年明け〜共通テスト | 共通テスト対策に集中 |
| 共通テスト後〜2月 | 本番。3日で1年分。最新年度はここで使う |
理科・数学を本格的に解き始める時期は、高3の秋以降が一つの目安です。(英語はもう少し早く始められます。)それまでの1年以上、赤本は分析に使ってください。
解けないから開かない、ではありません。解けない時期にこそ、赤本にはできることがあります。 高2の秋、まずは一度、志望校の赤本を開いてみてください。
よくあるご質問
Q1. 赤本の解答用紙はどうすればいいですか?
大学別の赤本には、解答用紙は付いていません。 その代わり、教学社の「赤本オンライン」というサイトで、解答用紙のPDFが公開されている大学があります。会員登録もログインも不要でダウンロードできます。
なお、共通テスト用の赤本には、紙のマークシート解答用紙が別冊で付いています。
Q2. 赤本に直接書き込んでもいいですか?
私は、赤本に直接書き込むことはおすすめしていません。 代わりに、「過去問用のノートを用意する」ことをおすすめします。大学別・教科別にノートを作り、そこに解答・自己採点・自己添削を残す方法です。こうすることで自分の分析が残せるので、受験前の1週間でやるべきことを明確にできます。 教学社からは『赤本ノートプラス(二次・私大用)』という専用のノートも出ています。共通テスト用やルーズリーフ版もあるので、一覧から自分に合うものを選ぶのがよいと思います。
解答用紙は赤本オンラインのPDFを使い、演習は別のノートに書く、という形をおすすめします。
Q3. 赤本・青本・黒本の違いは何ですか?
まぎらわしいのですが、次のように整理できます。
- 赤本=教学社。大学別と共通テスト用の両方があります
- 黒本=河合出版『共通テスト総合問題集』の通称。共通テスト用だけです
- 青本=駿台文庫。共通テスト用(実戦問題集)と、大学別(大学学部別青本)の両方に使われます
なお河合塾にも大学別の『入試攻略問題集』がありますが、これは過去問集ではなく、河合塾のオープン模試を収録したもので、対象は9大学に限られます。
Q4. 赤本は何周すればいいですか?
周回数を目標にしないでください。大事なのは、解き直したときに「なぜそう解くのか」を説明できるかどうかです。
現実的には、時間の限られた高3で全年度を何周もするのは難しいと思います。それより、1年分ごとに第8章の4項目を記録して、できなかった単元を問題集で潰すほうが、確実に力になります。同じ問題をもう一度解くのは、その単元を潰したあとで構いません。
Q5. 高2で赤本を買うのは早すぎませんか?
早すぎません。むしろ、早く手元に置くこと自体に意味があります。
分析は高2秋・春休み・高3の期末後と最低3回やりますし、机の上にあること自体が毎日の意識づけになります。「まだ解けないのに買うのはもったいない」と感じるかもしれませんが、この記事でお伝えしてきたとおり、赤本は解くためだけの本ではありません。
ためらうなら、まず学校や書店で手に取ってみてください。それでも、最終的には手元に1冊あるほうが、確実に使い倒せます。
Q6. 「過去問はいつから」と「赤本はいつから」は同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には少し違います。
「過去問」は、大学が公開しているものや無料のデータベースも含めた、入試問題そのものを指します。「赤本」は、その過去問に傾向と対策と解説を付けて本にしたものです。
この記事でお伝えした時期の考え方は、どちらにも当てはまります。ただし、「傾向と対策」を読むのは赤本でしかできません。そこがこの記事で「赤本を買う」ことをすすめている理由でもあります。
Q7. 学校でもらった過去問を解いたのですが、答えがありません。先生に見てもらえばいいですか?
教員をしていると、「過去問を解いてみたので、答えが合っているか見てもらえませんか」と言われることがよくあります。大学からもらった問題や、解答・解説の付いていない過去問に挑戦する生徒は、毎年います。
その熱意はとても良いのですが、私は赤本を買うことをおすすめします。
理由は、解いたらすぐに答え合わせができることが、とても重要だからです。見てくれる先生はきっといます。でも、その返却を待っているあいだに、せっかく挑戦したときの記憶がどんどん薄れてしまいます。「なぜこう考えたのか」「どこで詰まったのか」——復習でいちばん大事な部分は、解いた直後がいちばん鮮明なのです。
受験生の時間は限られています。答え合わせを待つ時間そのものが、もったいない。 そう考えると、赤本の値段は決して高くないと思います。
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志望校選びは、一気に決めなくて大丈夫。
今日の一歩が、合格に向けたスタートラインです。
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【記事内データの注記】
本記事のデータの出典:教学社 公式サイト(赤本の使い方/大学赤本シリーズ/難関校過去問シリーズ/共通テスト赤本シリーズ/赤本オンライン)/大学入試センター/旺文社パスナビ/東進 過去問データベース/河合出版・駿台文庫・Z会・東進ブックス・数研出版の各公式サイト/各大学の公式サイトおよび入学者選抜要項/文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」(いずれも取得日2026年7月26日〜29日)。収録年数・発売時期・各サービスの仕様は変わることがあります。なお、時期の目安や使い方に関する記述は、私の教員としての経験にもとづく一般的な提案であり、学校の進度や個人の学習状況によって最適な時期は変わります。





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